学位の選択:自分に相応しい学位は修士号 or 博士号?

大学院留学を考える出願予定者から寄せられる相談には、「自分のキャリアを踏まえると、どちらが適していると思いますか?」といった内容が含まれることがあります。そうした折のアドバイスとしは、卒業後の目標(Short-Term Goal)を達成するために必要な専門知識の幅と深さ、スキルの内容、経験の有効性、更には(将来の)キャリアパスの中における取得学位の役割や意味づけを考えてもらいます。

例えば経済学のような学問を修め、実際の現場で活躍されている多くは経済学博士の学位を取得済みの方々です。そして同分野における修士号は、むしろTerminal Degreeと位置づけられる傾向にあります。大学やシンクタンク等で研究を続けるにしろ、キャリアに対する信用付けという観点からは、博士号取得がより望ましい分野であると言えます。

Non-Terminal Degreeの場合、修士課程のカリキュラムが博士課程への準備期間として、必要最低限の知識と研究対象分野をより論理的に考察する能力を鍛えることを目的とするケースが挙げられます。もしくは修士号自体が存在せず、博士課程へ直接進学するプログラム構成もみられます。その際には、何かの理由で同課程を修了できなかった学生に(各プログラムが定めた履修条件を満たしていれば)Terminal Degreeとして修士号を授与されることがあります。

修士号の取得までに費やす月日は2年が一般的ですが、近年における経済や就職事情を考え、米国の大学院では1年プログラム(One-year program)が増設されるなどの動きが出ています。その一方で、博士号の場合は平均で7年前後はかかると言われています。研究費や生活費の捻出のため、コースワークや試験が修了した後に働き始める研究生も多数いるものの、研究の進捗が遅れ、志半ばで退学するケースも少なくはありません。学力や研究するための実践、応用力、創造力などを兼ね備えたとしても、意志の強固さや継続力に見られるメンタル面の強さが求められということになります。

修士課程のカリキュラムは体系立っており、学ぶべき期待値と提供される教育コンテンツが把握しやすい点が特徴です。かたや博士課程のカリキュラムは、その研究内容にも独自性が求められます。博士課程への留学を考えているのであれば、少なくとも現時点で取り上げたい研究テーマ、それをどの程度まで掘り下げて研究を継続していく青写真は持ち続けて欲しいと思います。